児童買春についての旅行業界の取り組み [2006年03月07日(Tue)]

「アジアの児童買春~旅行業界が取り組んだCSR」と題された、アムネスティ・インターナショナル日本が主催するCSRセミナー2006に行ってきた。

CSRとは、企業の社会的責任投資ということなのだが、多くの場合、メーカーの環境対策や福祉関係への募金などの活動が目立っていた。しかし、企業の社会的責任ってのは、環境や福祉だけでもなく。メーカーのような、ものを売る商売でなく、旅行業のような、サービスというものではないものを売る業界も、CSRに取り組むようになってきた。ちょうど、そんな時流に乗ったお話しだ。

さて、世界中で、児童買春にどれだけの人が対象になっているのかということだが。闇の世界なので数字が明らかになっていないのだが、ある国際組織が調べたところ、わかったところで、世界中で100万人もの子供が売春をしているそうだ。
そのうち、25万人がタイ、20万人が中国ということで、アジアでの児童買春は圧倒的に多く。その買春をしているのは、日本人がとても多いと言われる。実際、現地で、売春をしている少女に会うと、日本語を話せるケースが多いそうで、それだけ、販売対象が日本人であるという事がわかる。
そして、児童買春の対象になっているのは、必ずしも、行われている国や地域の人でなく、地方や隣国から連れてこられているケースも多いそうだ。

1990年のチェンマイで行われた会議から、児童買春の問題をどうしようという動きが世界中にあったのだが。それから、15年経って、日本の旅行業界も、日本の旅行業界らしいのやり方で、取り組みを始めたようだ。
15年も経って、いまさら・・・と言われるだろうが、旅行業界ってのは、客商売で、警察官ではないので、お客さんに強制的に対応する事ができないのです。観光をビジネスとして食うと考えると、児童買春はマイナス要因なので、それぞれが提示しないなどの工夫をしていたようだが。会社として、業界として、それを取り組むいい方法が、なかなか思いつかなかったのだ。
それは、あまりにも深刻な問題なので、マイナスのものからゼロにするという発想から、ゼロからプラスにするという発想があるということに気づきにくかったからのようである。
とにかく、児童買春は、旅行業界にマイナスである。
たとえば、児童買春について普通に良くないと思っている人が、旅行会社の意図とは関係なく、児童買春をしている人とたまたま同じツアーになったとして、たまたまその事実を知ってしまったら、多くの人は、不愉快になり、二度とそのツアーに行かないでしょう。
また、児童買春は、その少女なりに身体的、精神的ダメージを与えやすく、それに耐えるために、麻薬にも手を出す場合まであり、さらに、エイズなどの難病にやってしまう人も多い。そんなことで、とにかく、街にボロボロになった人が増えてしまう。これは、観光客を迎え入れる街としては、負の財産である。観光客を不安に思わせるような事は、ない方がいいに決まっている。(そこで、汚い者にフタをするだけの所も出てくるので、問題解決が難しい)

町役場とタイの観光警察が観光都市の街の盛り場で警備する所に同行したことがあるが、私服の役人が、鋭い目で、店員やお客さんや女の子の動きを見つめていた。そして、街に観光に来ている観光客に声をかけ、観光客のレベルで、怪しいことがなかったかの口コミでの情報収集をしている姿があった。観光で食う街は、児童買春や麻薬などでイメージダウンされては、食うに困るので必死である。
もちろん、地域レベルではなく、観光で食う国レベルでも、様々な取り組みを行っている。
しかし、国や地方自治体は、法律や警察などの強制執行機関を持っているのに対し。企業では、取り締まることが出来ない。これが、マイナスからゼロの発想の源である。

そこで、旅行業界の編み出した方法は、倫理規定を新たに作り、それに基づいて行動をするという方法だった。これが、ゼロからプラスにする方法である。
この倫理規定は”旅行と観光における性的搾取からの子ども保護に関する行動規定”に基づいてつくられていて、旅行会社なりが、ユニセフ(国連児童基金)、WTO(国際観光期間)、及び国際NGOのECPAT(エクパット)などが世界で推進している「Code of Conduct」というものに、サインをした所から、プロジェクトとして、実践活動に向けての行動そして、継続してゆくための行動に移されていくというものである。
行動規範だかにこそ、サインして認証して終わりではなく、継続性が必要なために、本来は「Code of Conduct」なのだが、敢えて日本人に解りやすいように日本では「コードプロジェクト」と言い習わすようにローカライズされている。

さて、この”旅行と観光における性的搾取からの子ども保護に関する行動規定”は、6つの内容がある。
以下は、今年の2/8に、JATA(社)日本旅行業協会と(財)日本ユニセフ協会が作った、「Code of Conduct」についての資料からの抜粋である。興味深いので是非読んで欲しい。

1)子どもの商業的性的搾取に反対する企業倫理規定・方針を確立する
昨年12月末までに、推進協議会のメンバーの旅行会社は各社の行動規範等の倫理規定に掲載。それらを文例として各社に公開、現在8社が実施済み。

(筆者注 ちなみに推進協議会に参加したいとする旅行会社が数社あり。今後も普及する見込みアリ)

2)出発地及び目的地の両国内の従業員に対し必要な教育・訓練を実施する社員教育資料として、英語版を日本語版に翻訳して作成。ユニセフの啓蒙用ビデオとともに各社に配布。利用方法等について本日研修を実施。

(筆者注 どうも、2/8に研修をしたようである。ただ、マニュアルは出来たばかりであり、実際にある会社では、4月の新卒からの研修からスタートし、順次拡大していくようです。また、企業が、分社化する動きがあるなかで、提携事業の会社も含む、グループ企業にも徹底しようという試みもされつつあります)

3)供給者(目的地ツアーオペレーター等)と結ぶ契約に、契約両者が子どもの性的搾取を拒否する事を記した条項を導入する日本海外ツアーオペレーター協会にて文例を作成。各社で契約更新の際、上記条項を導入する旨、連絡。各社とも3月の契約更改字の文面に導入予定。

(筆者注 じつは、私の考えるに、これが、実際に最も抑止力になるのではと思える条項だ。つまり、児童買春に関係してしまえば、契約が更改出来ず、結果として、仕事が干されるということだ。そして、旅行会社のチャーターするタクシーも、個人タクシーであれ、児童買春を紹介すると仕事が来なくなるということになる。しかし、欠点として、リスクが大きいだけに、児童買春の付加価値が高くなるが、絶対数は減るでしょう)

4)カタログ、バンフレット、機内映像、チケット、ホームページ等を通じ、旅行者に関連情報を提供する推進協議会のメンバーの旅行会社は、2006年上半期の海外旅行パッケージ商品のパンフレットにロゴ+文章を印刷する事を決定。JTBやJALPAKなどが2005年12月中旬より順次店頭へ。

(筆者注 どうも旅行の印刷物は、多種多様に渡り、しかも、一つの旅行会社のものでも、複雑にいろんな会社が関わっているために、実施についてはかなり難航しているようだ。世の中、計画通りに行くのはまれで、やってみないとわからない。てなことで、まだまだ印刷されていないものがあるそうです)

5)目的地の現地有力者に関連情報を提供する今後の取り組みについては、コードプロジェクト推進協議会で検討中。

(筆者注 多くの国では、有力者は日本以上に絶大な力を持っています。日本では、裏の社会と表の社会を分けようとしていますが、国によっては、堂々と表も裏も牛耳ってくれていますので、とても有効な手段かも知れません。また、セミナーの中で紹介されていたのですが、タイYMCAが同じ経済レベルのコミュニティで、小学生卒業以上の子どもが残っている所とそうでない所を調べたところ、地元の有力者が話し合って、子どもを守ろうということになり、児童買春のために子どもがコミュニティから出て行くという事が防げていたそうです。つまり、貧困だからといって、児童買春の道を選ばない方法もあるわけです)

6)コードプロジェクト運営事務局がベット指定する期間に対し、指定する文書をもって、本プロジェクト実行状況に関する年次報告書を提出する
2006年3月に英文報告書を作成予定。
(筆者注 是非日本語でも報告して欲しいものです。そうすることで、囲い込みが出来ます)

てなことで、長くなりましたが。

面白い取り組みがスタートしているので、今後もこのプロジェクトに注目してゆきたいところです。

私も、児童買春をテーマの一つにした「天の浮舟」という朗読劇を、実施するプロジェクトに噛んでいますが。深刻な話しだけに、やさしく語りかける朗読劇で、真剣に話し合う場を作ってみるお手伝いなんかが出来たらいいですね。
いろんな話し合う場もいいですが。
たとえば、旅行会社の新入社員研修のカリキュラムの中に、児童買春対策のワークショップを導入する際の、アイスブレーキングとして有効だと思います。
毎回、イベントの主旨に合わせて台本を直しているので、学校教育用にもアレンジ可能です。

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[CANPAN blog STILL ALIVE より]