×

環境利権 [2006年04月08日(Sat)]

環境利権 [2006年04月08日(Sat)]

環境省の随意契約がNHKのニュースで報道されていた。
随意契約とは「入札などの競争の方法によらず、適当と思われる相手方と契約を締結する方法」で、場合によっては、多くの事業者の公共事業への参入のチャンスを奪う契約方法とも言え、公平性や透明性に欠けている言われている。
このような随意契約を、環境省は、過去五年間の事業の93パーセントで行っていたというのだ。つまり、15分の1程度しか、入札をしていなかったということだ。入札でさえ、談合をして、不当に高く値段をつり上げたりしていたりするのに。随意契約では、言い値で、契約しまうようなことに繋がりやすく。場合によっては不当に高い金額で発注し、その利益で贈賄なんかの資金を作ることも可能だ。
環境技術というものは、先端技術である事が多く、その会社にしか出来ないために「随意契約」になりやすい。
たとえば、公用車を低公害車にしようとした場合。その低公害車を、ハイブリッド車と指定してしまえば、トヨタ、ホンダぐらいしかなく。しかも、偉いサンが乗る公用車となると、トヨタしか選択肢がなくなる。
だから、環境省をはじめとする役所の役人や政治家などに、こういう内容の環境対策をしてくれと、あらかじめメーカーなりが低公害対策についての提案しておけば、その条件に合うメーカーの製品が入札を受けずに、随意契約となり、確実に発注してもらえる。
これは、別に自動車の話しだけではなく、様々な環境保全のためのものに言えるのだ。
たとえば、ダイオキシンの発生しにくいゴミ焼却炉は、これまた最先端の技術が必要で、開発コストがかかっているため、従来のゴミ焼却炉より、かなり高額となる。しかも、高額なだけでなく、技術を持っているメーカーが限られているため、そこに発注が集中する。
他のメーカーはというと、開発コストがかかるので、手を出すのにリスクがかかるし、発注を受けていないから開発コストもかけるのが更に辛くなる。そうなることで、環境先進メーカーとそうでないメーカーとの差が広がり、多くの会社に多額の金額の入る公共事業にありつけなくなる。
このことは、メーカーに技術がないからということで、単純に切り捨てて良いのかというと、なんか違和感を感じてしまう。
どうも、この環境利権というのは、ここんところ、相当強くなってきているように感じてならない。
それは、環境ISOと呼ばれるISO14001などを取る企業が増えているからだ。
環境ISOを取っておかないと、役所の仕事が受けられないから企業は必死なのだ。裏返すと、環境技術を持っている会社が美味しい思いをしているから、それに気がつき、あやかりたい企業が増えたから、環境ISOを取ろうとするわけで。経営者としては、別に、環境への取り組みをしたいからではなく、公共事業を受注したいだけなのである。
公共事業の代表格が、開発がらみの建設業界だか。そこの名刺は、役所と同じく再生紙が使われていることが多い。これは、公共事業に参入するためには、環境対策をしているという大前提があるからだ。
これは、私の推測でしかないが、再生紙の値段が下がらない理由は、公共事業にあるのではないかという気がしている。
まず、再生紙は役所が買ってくれるから、必要以上に安くする必要がない。もしかすると、談合をして、高く買ってもらうなんてこともしているかもしれない。
また、公共事業を受けようとする企業は、役所の出している環境対策の条件を満たさないと受けることが出来ないから、高くても再生紙を買う。というか、買わざるを得ない。
つまり、再生紙は、安く売る必要がないのだ。だから、再生紙が安くならない。
そして、お金を持っていない人は、環境によくない紙を使わざるを得なくなる。
まあ、環境問題を解決するために、企業に努力してもらう必要もあり。そのために、ハードルを高くするという戦略をとるのは、一つの方法だ。しかし、勝ち組、負け組が別れるという二極化が進んでいると言われる中。そろそろ、こういうやり方では環境問題に対処出来なくなってきているようになってきている気がしてならない。
去年の流行語である、ロハスも、結局は、富裕層ビジネスの一つの形態であったのだが。お金を持っていると、選択肢が多く、環境を良くすることに貢献出来るが、貧しかったら環境を破壊する事に寄与するしか選択肢がなくなってしまう。しかも、貧しい人が増えているわけで、選択のしようがなく環境破壊に荷担せざるを得ない状況に置かれている人が増え。環境負荷を増やしてしまっている。昔は、お金のない人の方が、環境にやさしかったのに、今は、逆なのだ。
これの企業バージョンが、環境利権なのだと思う。環境利権で儲けているところは環境に優しく、環境利権で儲けていない所は、環境対策が出来る体力もない。

さて、ここになって、ぶっ倒れて入院中のにもかかわらず、たぶん環境にあまり興味の無さそうな落下傘部隊の今の環境相さんが、随意契約について言及したという、摩訶不思議な事が起きた。
一部マスコミにすっぱ抜かれたということにはなっているが。無視することもできるわけで。おそらく、企業の景気が戻り環境への投資が出来る状況になったり、お金をもっている企業の環境対策が出来てきたから、そろそろ、門戸をあけてほしいという、企業の相当強い要望があったから言及したのだろう。
それだけ、環境利権の取り合いに参入出来る企業が増え、利権争いが激化してきたことなのだと思う。
つまり、環境利権は、次のラウンドに移行しつつあると言える。
そして、いままでの、環境技術があれば、ごく一部が独占的に儲けられるというビジネスモデルの時代が終わりに近づき、参入企業が増えるなど、環境利権に広がりが出てきつつあるのだ。
環境技術も、特許を取っていると、特許の独占的な要素もある反面、技術を公開しているわけで、多くの人や企業が、その技術を使うことが出来るようになる。そのことにより、環境技術の普及が計られつつある。そのことにより、多くの企業が環境利権に参入出来るチャンスが出来てきたのだ。しかし、やはり、お金を持っていないと、参入出来ない。
昔は、お金のない人の方が、環境にやさしかったのに。今は、貧富の差の拡大とともに、お金を持っている人は(見せかけだけかも知れないが)環境にやさしくでき、お金を持っていない人は環境にやさしい選択肢が選べないという状況になる。そういう矛盾は、今度のラウンドでも解決するどころか、拡大していきそうな予感がする。
21世紀は、循環型社会と言われるが。お金がなくても、公共事業にからまなくても、環境にやさしくなれる事で、循環型社会は成立するのだと思う。
いまは、いろいろ実施しながら、模索している最中なので、様々な矛盾点が出てきているのだろうと思うのだが。
お金を持っている人の論理で、環境対策をする事の限界に、そろそろ気づくべきだろう。

——————————————————————

5年で9割以上が随意契約 環境相が見直し指示
http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2006040601003502_National.html

環境省は6日、2000-04年度に同省が発注した契約額500万円以上の事業約3200件のうち、随意契約が92・5%(金額の割合は91・8%)に上り、肺炎で入院中の小池百合子環境相から、積極的に見直すよう指示があったことを明らかにした。

契約のほとんどが特定業者との随意契約になっているとする一部の報道を受け、炭谷茂事務次官は記者会見で、調査研究事業が随意契約の大半を占めると指摘。「契約の見直しは、環境省の仕事の見直しにかかわってくるだろう」と述べ、環境相も同じ考えだとした。

その上で「現状で法律上の問題はないと考えるが、地方事務所の分も含め総点検している。6月中をめどに、政府全体で随意契約を見直す方針もあるので積極的にやりたい」と話した。

中国新聞(初版:4月6日21時8分)
——————————————————————

[CANPAN blog STILL ALIVE より]

Share this content: