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木の歯車の誘惑 [2007年09月11日(Tue)]

木の歯車の誘惑 [2007年09月11日(Tue)]

またまた、モノ・クリエイション2007ネタです。

1日目が終わったあと、ちょっとした懇親会があって、そこでお話しをした方のブースに行ってみました。
このブースは「木の歯車工房」という、木のおもちゃを作っている方です。
といっても、木のオモチャを売っているのではありません。
今回は展示のみです。
何故かというと、本職は別の仕事で、その合間に作っていて、1年に1.2個作れればいいところなのだそうで。しかも、誕生プレゼントということで、自分の子どものために作っているので、展示するにも、息子からお借りして展示している状態です。

このオモチャの特徴は、いろいろあって。

まずは、インターフェイスのこだわりです。ホンモノの機械と同じインターフェイスであったり、直感的に操作出来るように工夫されています。
たとえば、力がいる仕事をするときは、手前に引くという風になっていたり。
誤動作しないように、ロックがかかるようになっていたりします。このあたりもホンモノっぽい。
そのために、スムーズに操作できます。

次ぎに、破損しないような工夫です。
木の歯車を使っているので、無理な力を掛けると、歯車が壊れしてまいます。そこで、歯車に無理がかかりそうな状況となる前に、クラッチが働くなどで、力を逃がし、破損を防ぎます。

そして、これは、製作の原点にも繋がるのですが、木の歯車が回る音を大切にしているということです。
わたしは、NHK教育テレビのピタゴラスイッチのピタゴラ装置が好きなのですが、作者の方も、同じく好きなのだそうです。(そうだと思った)
ピタゴラ装置がなぜ、多くの人を惹き付けるのかという要因の一つに「音」があるんです。
あのピタゴラ装置は、木や金属、プラスチック、紙、ガラスなど、様々な素材が当たる音を大切にしていて、その音をきっちり録音してあるからこそ、惹き付けられるんです。
木の歯車も、木と木がかみ合う音が、人を惹き付けるんです。
そこには、木の歯車の持つ誘惑があるんです。

この作者の山上さんは、現代の電子化によるブラックボックス化した目的通りでしか遊べないオモチャに疑問をもっていて。それより、自分でしくみがどうなっているかを観察し、自分で考え作り出したくなる「誘惑」を、木の歯車のオモチャに託している。

日本は、ものづくりで発展した国ですが。電子化したオモチャが簡単に手にはいることで、型にはめられたモノの中で遊び。創造力が失われる危機的な状況があります。
だからこそ、木の歯車のオモチャで誘惑して、もの作りができる人を育てたいのだそうだ。

そんな野望が超大作をも創り出します。

木の歯車で作ったクレーン車です。
ハンズ大賞に出展したのですが、同じく出展していたデザイナーさんは最初オブジェかと思っていたようです。しかし、最終日に実際に動くところを見てもらったところ。無駄な歯車が一つもないことに、そのデザイナーが驚いたのだそうだ。
そのデザイナーは、一つも無駄のない蒸気機関車を発明した人を尊敬しているのだそうですが。この木のクレーン車が、一つの無駄もなく機能する姿を見て「蒸気機関車を作った方と同じように、あなたを尊敬します」と言ったそうです。

この木の歯車工房のオモチャって、外見は実際のモノとかけ離れているのですが。
機能することで、カバーされてどのような原理で動いているか解らなくなっている実機以上に、ホンモノに見えるんですよね。不思議です。

また、このオモチャ、簡単にお金を出して買えないところがいいです。
いまは、いくらでも、お金を出せばオモチャが買える。だから、自分でも作らないし、作り手のことがわからなくなる。たくさん買えるからと、習慣的に安く買いたたく。
そのために、自分がいざ働くとなったときに、その働きを買いたたかれる。お金がないから、さらに買いたたく。(それを、経済用語ではデフレスパイラルと言うようですが。)
作り手のことがわからなくなる事が、経済的にも問題を引き起こしかねない。
だからこそ、簡単に手に入らないオモチャの存在って大きいと思う。

是非、機会があったら、見て下さい。

そして、もの作りの誘惑に駆られて下さい。

木の歯車工房
http://www.geocities.jp/ki_no_haguruma/

[CANPAN blog STILL ALIVE より]

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