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文化活動の平和構築の役割 [2009年12月10日(Thu)]

文化活動の平和構築の役割 [2009年12月10日(Thu)]

青山学院大学国際交流共同研究センターが、第2回ラウンドテーブル『平和のための文化の役割』と題した研究会をひらいたので行ってきました。

この研究会は、国際交流基金と青山学院大学が連携してつくった研究組織が、文化人類学や平和構築などの学術関係者、JICA、国際交流基金や自衛隊などの政府系機関、UNHCRなどの国際機関、NGOなどをあつめて開催されました。

なぜ参加したのかというと、5月に実施したアンダマンスマイル展のことを、平和構築の事例として取り上げていただいたからです。

平和構築と言うと、戦地や紛争地域で実施されるものだと思われがちですが、この研究センターでは、大規模災害の復興も平和構築と捉えています。

ここでは、学術的な話から、事例紹介まで、短い時間ながら凝縮して報告や話し合いが行われました。

参加して最初に感じたのは、学術的に平和とは何か、文化とは何かの定義が難しいということでした。何気なく使っている、平和とか文化という言葉は、人によって捉え方が違う。そういうことを再認識しました。

それと、ここでは、世間でよく言われている「戦争は文化の衝突だ」というような、文化が戦争や紛争の原因だとするようなことが、否定的に取り扱われているのが気に入りました。
文化は、経済的な問題や政治的な問題で発生した紛争を強化するために使われると、紛争が激化していまうということが言われていました。

日本でも戦争に向かわすために、宗教から娯楽まで、いろんな文化活動で戦争状態を維持してきた過去があります。
ある方から聞いたのですが、大河ドラマなどで扱われる戦国時代の様々な物語ですが。百数十年前までは、戦国時代という言い方もしなかったし、戦国武将も今ほどにもてはやされていなかったそうです。
まあ時代劇でさえ、その多くは大正時代に西洋の映画や小説をヒントに作られたものですしね。

さてさて、文化活動の平和構築への取り組みということでも、いろんな取り組みが紹介されました。

パレスチナとイスラエルの子供たちがサッカーをする取り組みの話も出てきたのですが、なかなか複雑です。インパクトが大きかったために、どこかのカンにさわったのでしょう、法律で禁止されちゃったんですよね。そこで、第三国での田舎暮らしの共同体験という方法に変更していまも活動を継続しているそうな。
なかなか一筋縄ではいきません。

自衛隊も苦労しているようです。
いくら平和のためといっても、外国の実力組織(要は軍隊や武力集団)なわけで、派遣された国や地域では、見た目から「本当にこの人たちが自分たちの平和のために働いてくれるのだろうか」って思ってしまったり。占領されたような気分になっちゃうわけです。
そこで、車両にキャプテン翼のイラストをつけたりと、日本の文化で、抵抗感を和らげようとしているわけです。
先日のスマトラ島沖地震では、自衛隊の医療チームが派遣されたのですが、医療者といえども実力組織だということで、警戒されてしまったようです。
しかも、被災地の常ですが、どうしても、けが人や病人が多く、患者を待たすことになっていたので、待ち切れず、医療を受けずにどこかな行ってしまう人も多かったそうです。
そこで、待ち時間に子供たちに絵を描いてもらうということをやってみたところ、患者もどこかに行ってしまうということも減り、しかも順番通りに診療を受けていただけるようになったのだそうです。

日本もタイみたいに、大規模な自然災害に対し企画・立案・管理をする専門の省庁としての内務省防災局があれば、多少はやわらぐんですが、いまの日本は縦割り感がぬぐえないですね。そんな中で自衛隊が防災組織を代表として、派遣要請のタイミングの議論をすることに違和感を感じます。
個人的には、消防隊や自衛隊が来るまでに、自律的にコミュニティ単位で何ができるかが人命救助として大切だと思うし。復興が一段落した頃の経済の立て直しが、被災地や紛争後の地域に大切なことで、もっと注目されてもいいように思う。

話は戻って・・・・
冷戦が終わって、紛争が多くなったといわれていますが。紛争が5年以内に再び起こる確率が44%で、しかも二度あることは三度あるということで、繰り返すところは繰り返すのだそうです。
今回の参加者の中で、全然別の目的で参加していたメンタルケアの専門家の方がいたのですが、その方が、懲役刑となった障がい者の再犯のパターンと似ていて、興味深いとおっしゃっていました。

平和構築と社会福祉という、一見全く違うことが、社会で起こっているのか、個人で起こっているのかの違いがあれど、似たようなことが起こっているのかもしれません。
もしかすると、様々な福祉の問題解決の方法が平和構築に役立ち。もう一方で、平和構築の手法が福祉の問題解決に繋がるのかもしれません。
だからこそ、いろんな障がいを持つ人が携わって成果を上げているさをり織りが、津波被災地で効果を上げたのではないでしょうか。

[CANPAN blog STILL ALIVE より]

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