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大阪湾は意外な生物の宝庫 [2010年10月03日(Sun)]

大阪湾は意外な生物の宝庫 [2010年10月03日(Sun)]

私は生まれも育ちも甲子園なんですが、子どもの頃、よく生物調査に同行しました。
なぜ、生物調査をしていたかというと、大阪湾を埋め立てて工場を作るって計画が進んでいて、なんと私が通っていた小学校の上を高速道路が走るという計画が小学校の父母たちにわかり。高速道路の計画をやめさせるには、埋め立て自体をやめさせるのではということで、埋め立て反対の住民運動が起こった。
埋め立てを推進する人たちは、隣町が公害で有名な尼崎だったってことで、海が汚れていたり、かつては甲子園の海岸は海水浴場として栄えていましたが、下水などで汚れ大腸菌が増えたため、海水浴場が閉鎖され、価値のない海という認識があり。それが「どうせ価値のない海なら、埋め立てても・・・」って考え方をされていたようなんです。
そこで、海の価値を主張するには、科学的に攻めようということで、生物調査などで実態を調査を始めたわけです。
砂浜や戦前にあった水族館の跡の磯、干潟などの調査の他、漁船をチャーターして洋上にもでました。水深と透明度、水温、海の色などを測り、海水を採集したり。海底をドレッジという、小型の底引き網で削り取り、そこにある生物を調べました。
当時の学校では、海に遊びに行ってはいけないことにされていたので、子どもだった私たちにとっては、大手を振って海に触れられるということで、多くの子どもたちも参加しました。

なぜ、こういう事が出来たかというと、甲子園は企業で働く人が多く、主婦の中に生物学について日本トップクラスの研究をしていた大学で生物学を学んでいた方がいたり。近くの病院に貝類の研究所があったりと。住民側に科学的に対抗できる力があったからです。
途中からだと記憶しているが、公害に敏感な住民を説得する材料として、西宮市の山の手エリアの下水処理をするための終末処理場を作るのに埋立地を利用すると喧伝されたのですが。暗に道路を掘削して北部から南部に巨大な下水管を通す工事が南部に対して行われるわけで、山の手の高級住宅地のためになぜ南部の環境を侵されないといけないのかというような南部(海岸地域)の住民の反感を買う事となった。

この運動は、最終的には埋め立てを容認する形となり、沖合に縮小された形で埋立地がつくられ阪神高速湾岸線が走っています。海岸の一部は、鳥獣保護区に指定され、砂浜もなんとか甲子園浜海浜公園として生き残り、親水公園になっています。波がおだやかということで、初心者のボードセーリング(ウインドサーフィン)も行われています。
埋立地は阪神大震災の直後は、市内で大量に発生した崩壊した家屋の瓦礫を積み上げる場所となり、20メートルぐらいの高さまで積み上がりました。瓦礫の山からは、積み上げられた圧力による自然発火と思われる煙が立ち上がっていて、当時はずっと目がチカチカしたり、無意識に涙がこぼれたりしました。微粒子だけでなく、もしかすると有毒ガスも出ていたのかもしれません。
#この瓦礫の多くは、海上輸送され、処理能力に余裕のあった川崎市で処理されました。感謝。

大阪湾を歌った流行歌のひとつに、上田正樹の「悲しい色やね」ってのがありましたが。その曲が流行っていた頃までは確実に、海は捨てる場所だったわけで、生物調査は捨てられたものなど汚れたものの中から宝物を探すような行為だったように思います。

#まあ、インターネットの世界も、スパムメールの山の中から、埋もれた重要メールを探し出す事態になっていますが・・・。

ちゃんと探せば、宝物は出てくるんですね。

大阪湾は意外な生物の宝庫、絶滅危惧種48種も

絶滅のおそれがあるとされる「ハクセンシオマネキ」(大阪湾環境再生連絡会提供) 近畿地方整備局や大阪府、兵庫県、市民団体などでつくる「大阪湾環境再生連絡会」(会長=道奥康治・神戸大教授)は、5月末に府内や同県の沿岸部で実施した「大阪湾生き物一斉調査」の結果を発表した。

魚介類や海草など計474種を確認。この中には世界自然保護基金(WWF)や環境省、両府県のレッドデータブックなどに絶滅危惧種として登録されている生物48種も含まれていた。

調査は2008年から実施しており3回目で、環境保護団体など16団体の計792人がボランティアで参加。大阪市西淀川区の矢倉海岸や同県西宮市の甲子園浜海浜公園など17か所で、磯や干潟、砂浜などの生き物を調べた。

今回は初めて、WWFが希少種とするカニ「スネナガイソガニ」が西宮市の香櫨園浜で、海草「コアマモ」が同県洲本市の大浜で見つかったほか、阪南市の男里川河口など7か所では、WWFが絶滅の危険種に、また環境省も絶滅危惧2類に指定するカニ「ハクセンシオマネキ」が生息していることが確認されるなど、各地で珍しい動植物が見つかった。

同整備局は、今後も調査を重ね、結果を環境保全事業の基礎データとして活用する方針。調査に参加した阪南市の府立泉鳥取高3年山下貴史さん(17)は「大阪湾に、こんなに多くの生き物がいると初めて知った。次の世代まで残したい」と話し、岬町などで調査を手伝ったきしわだ自然資料館(岸和田市)の学芸員・風間美穂さん(38)は「多くの人が海に興味を持ち、水環境保護の意識をさらに高めてほしい」と願っていた。

(2010年10月2日15時23分 読売新聞)

[CANPAN blog STILL ALIVE より]

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