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タイの洪水への危機管理体制

タイの洪水への危機管理体制

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西日本豪雨ですが、雨が止んでも新たな川の氾濫が起きていて、しかも、まだ全容がつかめていないという状態で、まだまだ予断がゆるさない状態です。

現時点で150人を超し、未だに行方不明者が70人以上います。

そんな、7月10日に、政府から「プッシュ型支援」チーム設置し、11日以降に物資が届くようにするという報道がありました。ネット上では、災害が多く経験のある国なのに、対応が遅いのではないかという話も聞こえています。

そんなことで、他の国はどのようになっているだろうという参考として、タイの洪水への危機管理体制について紹介したいと思います。

前回は、タイの救援物資の「洪水セット」について書いたのですが、今回は組織について紹介します。

タイには、タイ王国内務省災害防止軽減局 (タイ語:กรมป้องกันและบรรเทาสาธารณภัย:ปภ.、英語:Department of Disaster Prevention and Mitigation)という役所が内務省に設置されています。
この部署を知ったのは14年前に、タイの内務省地方行政局でビデオ撮影の仕事をしたとき、同じ敷地にこの部署があり。その建物の下で昼食を食べたからです。
阪神淡路大震災を経験していたので、こういう部署があるのはうらやましいと感じました。その後、2004年スマトラ島沖地震が発生してタイに大津波が襲ったのですが。この部局が頑張っているのだと思って災害後の対応に注目していました。

その後、2011年9月に、地球環境財団のプロジェクトで内務省災害防止軽減局の取材をしようとした事があったのですが。大雨と洪水の気象予想が出ているため取材対応が出来ないという事を経験しています。なので、実際に担当者にお話を聞いての話ではない事をあらかじめ断っておくことにします。

内務省災害防止軽減局は、2002年に出来たもので、さまざまな組織が担当していた防災・減災・復興に関する基本計画、施策の策定や協力関連事業を集約したものです。防災政策の立案、警報の発令、復旧復興、被害評価を行っています。

2011年の大水害で注目された部局です。

まず、大雨が降り水害が起きると予想がでると、警報を発令するとともに、24時間体制での監視体制に入ります。何かあったらここの指示で軍からボランティア対応まで、いろんなものが自動的に動きます。日本の首相が災害毎になんやら対策室とか設置しなくてもすでにできているようなもんです。

全国18か所に災害防止軽減センターがあってそこと連携して対応します。

被災支援・援助や復興の部署もあります。海外との救援活動の連携の部署とかも。

ボランティア教育とか、高等専門学校ももっていたりと防災減災の教育も行っています。

ちなみに英語サイトもあるので、英語がわかれば読めますし。災害時は英語で対応もしてくれるようです。

この手のひらのマークが内務省災害防止軽減局のマークです。
タイ北部のチェンライでサッカーチームの12人の子どもたちとコーチの13人が洞窟に閉じ込められた時の救援チームの中にこのマークがついた一団もいました。

数年前、スマトラ島沖地震の大きな余震があって、津波警報が出たのですが、警報が出てすぐにタイ政府は「14時間以内に救援部隊が到着するので安全な場所に避難してくれ」という発表をしました。こういう対応なんかもここで策定されているようです。これって「プッシュ型」ってやつよね。この時は結局、大きな余震発生から2時間後に小さい津波が観測されただけでした。
ちなみにプーケットやカオラックでは観光客も含めて避難も完了していました。

こういう、中央からの対応だけでなく、地域の方の防災もしっかりしている。
1997年にタイの憲法が変わって、地方自治を促すボトムアップ型の政治手法も取り入れられたのですが。災害防止は地域ごとに状況が違うので、地域ごとに意思決定して防災・減災の対策をしてします。その一方で、中央からは、地域のスキルアップをするための教育もしています。

そんなことで、タイはシステマティックに、防災・減災の政策策定から、実施、そして評価まで行える体制が出来ています。

近くからみているせいもあり悪い所ばかりが見えているのかもしれませんけど。日本は、災害がとても多いのですが、なんか毎回同じことを繰り返しているように見えてしまいます。もしかすると、政策策定と評価がうまく機能していないからかもしれません。

日本は、防災対策大臣がいて、内閣府政策統括官(防災担当)というのが内閣府の防災ページをつくっていいるのですが、普段から組織化されている感じは受けません。実際の災害対策に関しては国土を守るという意味で国土交通省ということなんでしょうか。いざ、大きな災害が起きると、内閣府に非常災害対策本部など対策する組織が出来て、国土交通省、厚生労働省、総務省、消防庁、経済産業省、警察庁、防衛省などといろんな省庁が連携しながら動いてゆきます。これはこれで素晴らしいのですが。普段から、災害専門の部局を作っておいてトータルに災害に取り組むしくみがあってもいいように思います。

日本は、災害が多い先進国だから自分たちが一番知っていると信じ過ぎているように思える事を時々見かけます。確かに良いものもいっぱいあります。しかし、他の国にももっと良いものもあったりします。キューバとかも優れたしくみを持っているようなので、そういうのから学び使えるものは取り込んでいって欲しいです。

参考 「歴史的豪雨が分かっていながら首相が酒盛りしていた日本と、大型ハリケーン連発でも死者を出さないキューバの違い」足立力也 ハーバービジネスオンライン 

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参考 日本の内閣府の防災組織 内閣府防災情報ページより

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