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夕張の仲間たちとやさしさパワーのリストバンド [2007年06月18日(Mon)]

夕張の仲間たちとやさしさパワーのリストバンド [2007年06月18日(Mon)]

夕張の中心部から少し南に行った、清水沢という所にある「手織り工房レラ」を伺った。
ここでは、15年前から、支援と必要とする仲間が、さをり織りや様々なアートワークをしている。現在8名の仲間がさをり織りを作っている。
いまここでは、6月30日から7月1日に行われる野外コンサート「キュー・ミュージック・ジャンボリー in 夕張」でイベントを盛り上げるためのグッズを手作りで製作しているのです。

それはなぜ、ここで、そのような事をしているのでしょうか。
まずは、今起きている出来事の前に、時代的な背景からお話しします。
みなさんも報道などを通じてご存じの通り、夕張市は財政破綻をし、只今、大リストラ中です。その大リストラの一環として福祉予算を削減も行うわけですが、その中でも真っ先に削減の対象として選ばれたのが、少数派である支援を必要とする知的障害者と呼ばれる方たちでした。おそらく、多くの人に影響が出るものより、少数派の人からリストラする方が反発が少ないという判断が少なからずあったのでしょう。
それだけではありません。障害者自立支援法という名前はいいけど実情にそぐわない法律が出来てしまったため、小さくてもちゃんとやっていこうという施設は「障害者自立支援法に基づく障害者支援施設の設備及び運営に関する基準」という細則の第九条に記された「施設入所支援は30名以上」という項目により、定員30名という清水沢学園は、一人でも欠けると施設として認められなくなってしまうという制度の狭間にはまってしまいました。
それ以前に、この法律だけではありませんが、自立という一見美しい言葉の裏に見え隠れする、(税金を払うため?)お金を稼ぐ人、お金を使える人でないと人でないというような価値観が、いろんなことで困っている人々の尊厳を損ないかねない危険性を秘めている。
そんなことで小規模な施設では、法律に基づくことにより、支援が必要な人に必要な支援を施しにくくなりました。
そんな厳しい社会状況の中、自らの考えを様々な政策に翻弄されることなく、夕張の本当の財産である自然を生かした自分たちの理想の仲間と過ごせる施設を創り上げていこうと「手織り工房レラ」のある清水沢学園では様々な模索をしていました。

そんなとき、北海道出身の人気グループGLAYのTERUさんが「手織り工房レラ」の存在を知り、自分だからこそ出来る何かがないかと思い、自ら現地に赴き様々なアクションをはじめました。
彼はその活動の一つとして、自らブログなどにさをり織りを作るための糸が足りないなどの情報をブログなどで発信しました。すると、たくさんの糸が全国から届きました。しかも、これらの糸は、温かいメッセージと共に送られてきたのです。中には10年ぐらい寝かせていた思い出のあるドイツ製の毛糸などもありました。
また、TERUさんは、この他に、自分ならではの出来ることとして、「手織り工房レラ」の看板を作りました。いままでは、「手織り工房レラ」には立派な看板が無かったのですが、素晴らしい看板が出来上がりました。

 

手織り工房レラの看板

看板が出来た頃からGLAYのファンの方がぽつりぽつりと夕張を訪れるようになりました。
ファンの方には工房を遠巻きに見て看板だけを撮影して帰っていく人もいるのですが、工房に入ってきて工房のことを聞くなど何らかの関わりを持とうとする人たちもいました。
そして、関わりを持とうとした方は、支援を必要とする仲間が一生懸命にさをり織りを作る姿を見て、不思議と癒されて帰って行くのだそうです。正確に言うと、支援が必要な仲間を支援をする仲間が共に作り出した創造的な空間に癒されているのでしょう。

 

手仕事をする手は美しく、それだけで芸術だ

癒された方の中には、自分の出来る範囲で自らも支援をする仲間になりたいと思う方も現れ出しました。

4月の終わり頃、そのGLAYが、キュー・ミュージック・ジャンボリー in 夕張に正式に出演する事が決まりました。「手織り工房レラ」では、自分たちが出来る方法でイベントを応援し、しかも、自らの夢を実現するためのアクションができないかと考えました。それから、いろんなアイデアを出し検討しました。

5月中旬。東京の代々木公園で行われたタイフェスティバル2007にゲスト出演していた、夕張から何千キロも離れた国、タイ王国の人気グループ「モダンドッグ」の応援グッズとして、津波により4000名以上が亡くなったタイ南部のパンガー県の復興住宅で作ったさをり織りのリストバンドを販売したとの情報を、このCanpanブログ内のブログ記事で知りました。
「手織り工房レラ」は、自分たちもコンサートを盛り上げるためのリストバンドを自分たちのさをり織りで作る事を決めました。

タイの津波被災地で考えられたアイデアと復活パワーが何千キロを越えて北海道の夕張に伝わったのです。

さをり織りは、もともと日本で生まれた織物でJICAの支援などもあり、タイの施設などでも少しずつ作り出していました。その技術を使い、2004年に襲った津波の心のケアのためにパンガー県でさをり織りを始めたのです。
さをり織りは手織りのため、30センチ織るのにも数時間という時間を要します。そのため、経済支援のために販売しようとした場合、単価が高くなり売れにくいという問題がありました。そこでお金持ちではなくできるだけ多くの人が買ってもらえるように、価格を抑えようと考えました。そのアイデアの一つとして、布を小さく切りリストバンドなどを作りました。価格戦略は成功しリストバンドが売れ始め、さをり織りが仕事をする事による心のケアだけでなく被災者の収入確保にも役立つようになりました。
そのころ、タイのミュージシャン「モダンドッグ」のボーカルPodは以前から津波の支援の活動をしていたのですが、そんなさをり織りのリストバンドの事を知りモダンドッグのロゴ入りリストバンドの製作を発注。コンサートなどでの販売を開始したのでした。
一度は財政難になり、継続が難しいと思われた、津波のさをり織りプロジェクトは、リストバンドなど低価格の商品が売れ始めた事で、経営が持ち直し継続的な津波被災者の支援が出来るようになりました。

今年修好120周年を迎える、日本とタイ王国という二つの国のトップミュージシャンの自発的な支援活動が「さをり織り」というキーワードで繋がった。
さをり織りを作る仲間と日本とタイのそれぞれのトップミュージシャンとの関わりの中、タイでの活動がさをり織りのふるさと日本に伝わり、ひとつのカタチになろうとしている。

 

出来上がってきたリストバンド

「手織り工房レラ」では、50名の方から贈られた糸を、8名の支援を必要とする仲間たちが丹念に手織りをし、支援が必要な仲間が出来ない製品加工の作業を「手織り工房レラ」を訪れた方を中心に、全国の支援をする仲間が手伝うなどをして、1000本のリストバンドが急ピッチで出来上がりつつあります。
もちろんTREUさんも離れていてもサポートしているとのこと。

私の訪れた時にも、なんと山口県でロックミシン掛けをしてくれた方から荷物が届きました。

このリストバンドは、キュー・ミュージック・ジャンボリー in 夕張の会場内で限定1000本販売されます。
タイの津波被災地のやさしさパワーを受け継ぎ、様々な人々のやさしさで織りなされた、夕張の「手織り工房レラ」のリストバンドを是非手にして下さい。
きっとあなたもやさしくなれます。

☆参考情報☆

「手織り工房レラ」について
こちらのブログに経緯や活動が書かれています是非ご覧下さい。

『夕張の知的な支援を必要とする仲間たち』

「Moderndog」について
タイの人気ロックグループ。インディーズ時代も含め結成15年目。
日本での津波の復興支援活動としては、2005年に横浜国際トリエンナーレの会場にてさをり織りの販売を行った。

Moderndog公式HP(タイ語&英語)
http://www.moderndog.biz/
Moderndogの試聴が出来るサイト(英語)
http://www.myspace.com/moderndogneverlie

バンコクから伝わってきた情報ですが。
モダンドッグのボーカルPodは、自らのアクションが「手織り工房レラ」の活動のヒントになった事を喜んでいるとのこと。今回、スケジュールが会わなかったので夕張のコンサートには行けないが、いずれ夕張に行きたいとのこと。

タイフェスティバルでのライブの様子 タイ大使館HPより
ふるさとを離れ日本という遠い国に住み働いているタイ人の方々がコンサートに熱狂する姿が撮されています。

ストーリーは、まだまだ続きます。

[CANPAN blog STILL ALIVE より]

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