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夕張の老人福祉会館のその後 [2007年12月17日(Mon)]

夕張の老人福祉会館のその後 [2007年12月17日(Mon)]

以前、10月29日の石田さんのブログに北海道新聞の記事から引用の形で、夕張の老人福祉会館が廃止の危機に瀕しているということ知ったのだが。そのことがどうも気になって、老人福祉会館を訪ねた。

新聞の記事では、9月に昨年比、54パーセント減、つまり利用者が半減以下となったと書かれていたので、現状が知りたくて訪ねたのだ。

結論からいいます。
どうにか、V字回復をしています。
つまり、存続できる可能性が出てきたのです。平たく言うと、お年寄りの憩いの場が守られつつあるのです。

要因はいくつもあるのですが。

まず、危機感を持ってアクションをしたということがあります。
「運営する市社会福祉協議会は「このままでは年明けにも廃止論議を始めることになる」と、近く市内全戸にチラシを配布、利用を呼び掛ける。 」という記事に書かれておりましたが。このチラシ配布というアクションのおかげで、利用者の減少に歯止めがかかりました。

次に、燃料代の高騰があります。
札幌市内で、一リットル当たりの灯油が、昨年の約60円から約100円にという感じで、急激な燃料代の高騰があり。家にお風呂がある方が、お風呂を沸かすより安いという理由で、利用を始めたのです。
利用料は一回300円ですが、回数券を買うと、10回分の料金で12回利用でき、一回が250円となるため。水道代、燃料代を考えるとお風呂を焚くより安いということになります。
確かに、燃料代の高騰は利用者増加の追い風となったわけですが。
結局は経費の増加でもあるので、安心とは言えない。
夏場はお風呂のありがたさが少ないので、また来年の夏も利用者減に悩まされる可能性がある。
だから、これからが正念場と言える。

そして、職員の努力。
先ほど、アクションに移したということを書きましたが。それ以外にも努力をしています。
他の自治体の施設などの運営を参考にしたり、似たような状態の町の社会福祉協議会と連絡をとったり。利用者のニーズに耳を傾け、自分たちでできることで新しいサービスを始めたりしている。
特に印象的だったのが、人工透析利用者の搬送サービス事業で、利用者のニーズがふとしたことで聞こえたことから、これならできるということでスタートしている。
私のカンでは、この成功事例があってこそ、結果を出していく面白さを感じだしたのではないかとという気がしています。
ただし、残念ながら、職員の努力は、職員に負担を強いている部分が多く。健康を害する職員が出てしまった。

この他に問題点は、当初想定していた昨年比70パーセントですが。現在惜しいところまで来ているのですが、まだ達成できていない。
しかも、当初の予定でも年間200万の赤字が出るということだったので。
多くの方からのご寄附などがあったのですが、いままでの財産を切り崩していかざるを得ないのが現状のようです。
このまま切り崩していくわけにはいきません。ですので、今後、財源をどのように確保し、支出を見直し、経営を立て直すかという状況は変わっていません。
財源確保もなかなか大変で、いかに効果的にトラブルのない方法で集めるかに知恵を絞り続けなければならない。

そんなことで、財政破綻でサービスが次々と打ち切られていく中で、自分たちで見聞きし、自分たちで考え、自分たちで行動をして、結果を出しつつある姿が印象的でした。

一方で・・・・

こちら、銀行ではありません。某役場ですが。

対照的な姿がありました。

人員が減り、仕事が増えたことはわかります。
配置転換で、慣れない部署に移ったこともわかります。
法律に従った仕事さえしておけば問題ないのもわかります。
しかし、法律では、法律の目的を達成するために、日本全国均等に対応できるものと、地域の特性などの要因で、法律に書かれたままでは目的を達成できないものがあり。それを条例などでフォローしていくというのが、地方自治体の姿だと思うのですが。
財政再建団体という形となり、自治体の自治の権限を制限されているとはいえ、権限の制限を拡大解釈しすぎなのではないかと思えてなりません。

しかも、部署をまとめる役職のついている人が、担当になって、まだ半年なので、この内容について素人ですって、抜けぬけと言っちゃっていました。
その人の個性なのかもしれませんが、そんな言い訳が通用する環境があるからこそ、言えてしまう面も大きいと思います。

また、お金が勝手に使えないから、人的なものなどで対処したいと言うのはいいですが。
残念ながら、市民の声を聞こうという姿勢が感じられませんでした。

あるサービスを打ち切ったことに対し、最初はメディアにとりあげられたが、住民からサービスが無くなったから困ったので、こうしてほしいというニーズが上がってこないと言ってました。

だって、お金がないので市民の窓口になる出張施設を無くしたのはいいが、それをフォローする仕組みは作っていないし。もとから聞こうとしていないから、ニーズが聞こえてこないんですよね。

住民に近づきニーズを聞きだす役目がなく、単に窓口だけなのでしたら、統合しちゃった方が効率的です。それだったら、統合するというのは間違った判断ではなかったと思います。
ただ、それが地方自治体としての役割として正しいのかというと、それは疑問です。

こんな状態を見ちゃうと。

この張り紙がむなしくなる。
住民のニーズを聞いてくれる体制になるまで、夕張市外でたばこを買った方がいいんじゃないのって思っちゃう。

もう少し、再生の階段を降りて行って。市民の声を聞ける体制を作ってから。再生の階段を上ってほしいですね。

つーか、このままでは、市は18年たっても借金を返しても人として生き生きと生きていける町として再生しないんじゃないでしょうか。

さらに言うと、いち早く、財政破綻したことで得たノウハウで、多くの財政が厳しい街を再生することができる芽を摘んでしまうことになる。最終的に、日本全国の多くの人を困らせることになるんですよね。

そんなこと、一地方公務員には関係ないのかもしれませんね。
でも、日本が悪くなって困るのは、あなたです。

私が夕張に期待したいのは、人として生き生きと生きていける普通の町に再生していくことです。

夕張という地名って、妙に人の心に引っかかる地名だと思うんですよね。だから、財政破綻したと話題になったとはいえ、多くの人が動いたのです。おかげで、ここしばらく、一種のお祭り騒ぎにもなりました。
そういう、素晴らしい地名を持っているのだからこそ、ちゃんと、結果を出してもらいたいんです。形として表わしてほしいんです。
メディアの世界では夕張の財政破綻ネタも賞味期限切れとなってきています。だからこそ、一時的な成果ではなく、継続的なものになる結果が必要なんです。

今日は、一部で、そういう再生の芽を見つけたのはいいのですが。
片一方で、何も問題を解決しようとしない姿を見てしまい。そのギャップを感じてしまいました。

[CANPAN blog STILL ALIVE より]

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