人口300人の村の小学校でのIT機器を活用した教育

タイ南部のラノーン県にあるタレノーク村の小学校に行ってきました。
この村は山と海に挟まれた人口300人の100%イスラム教徒が住む小さな村です。
2004年スマトラ島沖地震の大津波の時に6.8メートルの津波が押し寄せ84人の犠牲者が出たことでタイ全土に名前が知られるようになった村です。
津波の日は日曜日だったのですが、ダンスの練習のために生徒が海に近い小学校に登校していたため8人の児童と1人の先生が犠牲になりました。旧校舎は1階が吹き抜けの高床式の校舎だったのですが、津波によって全てが流され、学校の敷地に残ったのは国旗掲揚のポールのみでした。
その後、元の小学校のすぐ近くに学校を再建したのですが、村人たちが津波が怖いという事で津波から3年後に山の中腹にある今の場所に小学校が移設されました。

タレーノーク小学校
小学校の校門 校舎は奥のスロープの上にある

この小学校は王室プロジェクトの支援を得ているので設備が充実しています。給食室と食堂も整備されています。
2年ほど前にえらい工事をしているなと思っていたのですが、久しぶりに学校に行ってみると各教室に大型液晶モニターとパソコンとビデオカメラなどが設置されていました。

この小学校は、幼稚園が年長と年少の2学年、小学校が1年から6年の6学年があり、併せて児童数は50人程度です。教師は5人配置されています。小学校は複式学級になっています。

教室は一つの部屋を2つの学年が利用する形になっているのですが、 教室の前後にホワイトボードと大型液晶モニターが配置されています。学年ごとに児童が背を向けるように机が配置され液晶モニターを見るようになっています。

小画面に他の学校の児童の様子が映っている

1人の先生が2つの学年を受け持つのですが、それを可能にするのはビデオ授業と遠隔授業です。
ビデオ授業の場合、ビデオ教材と連動した教科書と副教材があり、ビデオ授業の合間に教員によって児童がビデオ授業でわからない事や出来ていない事を補う形で進められます。ビデオはパソコンの中に保存されている動画と映像配信によるものがあります。
教員の授業の工夫の余地が少ない面はありますが、授業が標準化できることと、日本の教員のように授業の準備の労力がかからないという面があります。ビデオを流すタイミングを2つのクラスでずらす事で、片一方の学年が遊ぶことなく、それぞれの学年にあわせた指導が出来ます。

遠隔授業は、ペチャブリー県にあるセンターのスタジオとインターネット回線を介して教室と接続し、センターの教員によるインタラクティブな遠隔授業を行っています。
大型液晶モニターの上にはビデオ会議システムが設置されており、セットトップボックスに内蔵されたカメラで生徒の様子がセンターの教師に伝わるようになっているようです。
そのせいか、ビデオ授業より遠隔授業の方が児童は集中して授業に取り組んでいるようです。
同時に何か所の学校を接続しているかは確認できてませんでしたが、おそらく複数の学校に接続しているものと思われます。
こちらも、遠隔授業の前後に担任の先生によるフォローアップが行われるとのことです。

トレーニング機器

校庭には屋外で使えるトレーニング機器もあります。学校から帰った子どもたちが夕方に自由に遊んでます。

中等教育や高等教育を受けるためにスクールバスに乗る生徒たち
主要3キャリアの携帯電話のアンテナ

この村には、小学校までしかないので、中学校や高校は村の外に通う事になります。もしくは寄宿生の高校。
朝にトラックを改造したスクールバスが来るので、生徒たちはそれに乗って登校します。
大学はラノーン県の県庁所在地かプーケットかバンコクになります。こちらもこの村から通えないので寮生活になります。
高等教育を受けようとすると都市部へ出ていく事になり、就職も都市部ということになってきます。
20年少し前まで電気が通じておらず。津波後数年までは携帯電話もつながりませんでした。携帯電話をつなぐためには山を超えなくてはなりませんでした。しかし、この数年で4Gが使えるようになり、村人はスマートフォンを持つようになりました。
通信技術や遠隔教育の技術が発展する事で、そのうち地方の村落でも通信制の高等教育も受けられるようになるかもしれません。